チームの心を育てる

対話の力で深い学びを引き出す方法【道徳編】

若手教員

「主体的で対話的な深い学び」が大切だと聞きますが・・・

どうすれば、そんな学びができるのかがわかりません。

心先生

こんにちは。

「心を育て、心をつなぐ」がモットーの心先生です。

今現在、主体的で対話的な深い学びが求められています。

しかし、やみくもに「主体的で対話的な深い学び」を目指してもすぐには上手くいかないかもしれません。

そこで、まずは基本の型を知り、実践してみることはいかがでしょうか?

本日は、私が主体的で対話的な深い学びを行う時に大切にしていることを道徳の授業を例に紹介します。

最後まで読んで、ぜひ実践してみてください。

これからは、

主体的で対話的な深い学びが大切である

という言葉を聞いたことがある先生も多くいるのではないでしょうか。

しかし、どうすれば主体的で対話的な深い学びができるかを教わることは少ないのかもしれません。

そこで、今回は私が主体的で対話的な深い学びを実践している時に意識していることを紹介します。

もちろん、簡単にできるものではないかもしれませんが、今回ご紹介する基本を理解して実践していただくだけで、「主体的で対話的な深い学び」に大きく近づくことができます。

ぜひ、私と一緒に、「主体的で対話的な深い学び」に挑戦してみませんか?

この記事を読んで欲しい人

主体的で対話的な深い学びを目指しているがどうしたらいいかがわからない先生

すでに主体的で対話的な深い学びを実践しているがさらにレベルアップしたい先生

深い学びが効果的な理由とは

心先生

なぜ、深い学びが求められているのだろう?

深い学びを目指す理由は次の3つです。

深い学びを目指す理由
  1. 知識が長期記憶になる
  2. 未知の状況でも知識を活用できるようになる
  3. 生徒と教師が相互的に学ぶことで生徒も教師も楽しい
  4. 物事の本質を捉えることができる

では、一つずつ見ていきましょう。

知識が長期記憶になる

主体的で対話的に学ぶということは、まず自分の意見を持ちその意見を明示しながら、他の人の意見を聞き、自分との違いを比較したりしながら、新たなことに気がついたり、学んだりしながら深めていきます。

我々人間は、新たに学ぶことが、これまでの自分がすでに持っている知識や経験と結びつくことになるのことで長期記憶に残るようになっています。

なので、深い学びを行うことで記憶が長期記憶になりやすいのです。

未知の状況でも知識を活用できるようになる

主体的で対話的で深い学びは、一問一答のような簡単な問題ではなく、簡単に答えがでないような難しい問題に取り組みます。

難しい問題に取り組む中で、うすっぺらい知識ではなく、「なるほど!」と思える物事の本質を学ぶことを目指します。

この本質を学ぶということが大切で、本質を学ぶことができれば他のことに応用することもできるようになります。

さらに、対話を重ねる中で問題を解決していく力を身につけることで、自分1人で解決できない問題でも解決他の問題になっても活用することができます。

これからの時代は、これまで以上に変化が早くなるからこそ、未知の状況の中で活用していく力が大切になってくるのです。

生徒も教師も相互的に学ぶことで教師も生徒も楽しい

生徒が自分で考えたり、自分で気づきを得ていくということは、教師の話を聞くだけの受け身な姿勢ではなく、生徒が主体的に取り組む姿勢が大切になります。

そして、生徒が主体的に学ぶからこそ、学習は楽しくなるのです。

また、主体的で対話的な学びは、私たち教師も学ぶことが多くあります。

特に、道徳などの答えがなくそれぞれの価値観が出るものは、私自身も生徒の発言に対して、「なるほどなー」と深く考えさせられることが多くあり、本当に楽しいものです。

深い学びを目指す対話の流れ

心先生

深い学びを目指すための流れを、ここでは道徳を例に解説していきます!

深い学びを目指す対話の流れ
  1. 問いを設定する
  2. 自分の考えを持ちつ
  3. 他者と対話をおこなう
  4. 本質的な深い学びを深める為に必要な意見を意図的に交流する
  5. 意見の違いを明確にし、さらに自分の考えを持たせてから交流を繰り返す
  6. 授業を通しての考え方の変化や気づきを振り返らせる

1.問いを設定する

人は問われて、初めて考える

主体的で対話的な深い学びを行う為には、まず「問い」が必要になります。

人は日常をなんとなく過ごしているものです。

しかし、無意識で過ごしている日常に、「〇〇についてどう思う?」という問いがあれば、そこに意識がいき考えることができるようになります。

問いがあることで、「無意識」から「意識」へと変わっていくのです。

人は、問われて初めて考えるものです。そして、その考えから気づきが生まれます。

だからこそ、授業の核となる問いが必要になります。

大人でも難しいレベルの問いを用意する

問いは授業の根幹になります。

この問いを聞いたときに、クラスの中に「これはわかる!」「簡単だなー」と思う生徒がいてはいけないのです。理想は全員の頭の中に「?」が浮かぶ問いです。

しかし、授業を進めていく中で「僕はこう思うな・・・」「僕はこう思っていたけど、そういう考え方があるのか・・・なるほど・・・」「やっぱり僕は〇〇を大切にしたいな・・・」などと自分なりの答えや価値観にたどり着く必要があります。

いい問いとは、初めは全員がわからないが、授業を進めていく中で全員が「なるほど!」と思える問いです。

しかし、この問いを作ることが本当に難しいのです。

なぜなら、対象の生徒によって問いを変える必要があるからです。

これは、実際に生徒と接している先生が生徒やクラスの状況を見て判断していくしかありません。

ただ、少なくても大人でもすぐに答えが出ないような問いを用意することは忘れないでください。

道徳の授業での例

ここでは、実際に私が道徳の授業で行った問いを紹介します。

この日の授業は、勤労についての内容を取り扱うものでした。

物語は、仕事が続かない人の物語です。仕事をすぐに辞めてしまい何もやってもの続かない人が、ある気持ちの変化から懸命に仕事に打ち込むようになります。

すると、仕事のなかにあった「楽しさ」や「やりがい」に気がついていく。

という物語です。

この物語を読んだあとの私が用意した中心発問は、

「仕事を転々とすることは本当に悪いことのなのか?」

でした。

2.自分の考えを持つ

対話的で主体的な深い学びを行うためには、まずは自分の考えを持つことが大切です。

自分の意見や自分の価値観があるからこそ、他の人の意見との違いがわかり、新たな気づきが生まれるのです。

初めの意見は、他の人との比較がしやすくなるようにいつくかの選択肢を用意します。

そして、自分の意見は何なのか、「選択肢」と「理由」を考えさせます。

選択肢は、

  1. とてもそう思う。
  2. どちらかといえばそう思う。
  3. どちらかといえばそう思わない。
  4. そう思わない。
  5. その他

のようにします。

ポイントは、「その他」を入れることです。

「その他」を選択する生徒は深く考えている可能性が高いので、ぜひ注目してあげてください。

道徳の授業での例

先程の道徳の授業での例としては、

「仕事を転々とすることは本当に悪いことのなのか?」という問いに対して、

  1. とても悪いことだと思う
  2. どちらかといえば悪いことだと思う
  3. どちらかといえば良いことだと思う
  4. 良いことだと思う
  5. その他

の5つの選択肢と理由を考えてもらいました。

3.自分の意見を表明する

自分の意見があれば、その意見を表明してもらいます。

方法はいろんな方法があると思います。

タブレットなどを使って意見を交流する方法もありますが、最も手軽にできる方法は、指で自分の意見を表してもらうことではないでしょうか。

選択肢が3つならグー・チョキ・パー。選択肢が5つなら指で1〜5の数字を出してもらうのです。

ポイントは、「全員が同時に意見を出す」ということです。

よくある、選択肢を1つずつ聞いて手をあげてもらう方法もありますが、この方法では最後まで手を挙げない生徒が現れたり、自分のあげようと思っていた意見に手をあげる人がいなかったので手をあげることができないといったケースが生まれます。

これを解消する為にも、全員が「せーの!」で意見を表明することを推奨します。

そうすることで、全員が意見を出しやすい環境になります。

道徳の授業での例

道徳の授業の例で言うと、

まずは、5つの選択肢があったので、Googleクラスルームに選択肢の番号とその理由を入力してもらいました。

その上で、どの程度の人数のバランスになっているかを視覚的にわかりやすくする為に、該当する数字を指で出してもらうようにしました。

4.他者と対話をおこなう

対話を深める言葉

自分の意見を表明したら、今度は対話へと移っていきます。

対話とは、直接に向かい合って互いに話をすることです。

しかし、ただお互いの意見を伝えるだけでは深い学びの実現はありません。

表面上の話ではなく、ここでいかに深い対話へとできるかどうかで深い学びを実現できるかで変わります。

そこで、深い対話を生み出すために、生徒には意見を聞くだけでなく次のような言葉を使って話を深めることを促します。

対話を深める言葉
  • なんで?
  • どうして?
  • 例えば?
  • どんな時にそう思った?
  • 〇〇の時と△△の時の違いは?

こういった言葉を使うことで生徒どうしの話し合いがより深まっていくことが実感できるはずです。

対話は少人数で

対話を行うときは、まずは少人数で行うことが基本です。

理由は、大人数になると話を聞いている時間が長くなり受け身な姿勢になり主体的に参加しにくくなるからです。

ペアや4人グループで対話を行うことで、相手の意見を聞きながらも自分の意見を伝えることができるようになります。

じっくり時間をかけて行う

この対話の時間が授業の中心になる大切な時間なので、ここしっかりと時間を確保しましょう。

全員が起立して4人班の中での発表が終わったら座る方式で意見交流をするなどの方法は、テンポよく交流ができるものの深い対話には向いていません。理由は、深い話をしようと思っても周りの生徒が座っていくと話している生徒たちも「早く座らなければ・・・」と思ってしまいます。

大切なことは、焦らせないことです。ゆっくり、じっくりと時間をかけて対話が深まるようにしましょう。

しかし、班によってはすぐに交流が終わってしまう班や、対話が深まり盛り上がっている班があったりします。

そんな時は、早く終わっている班の元に行って、教師が「なんで?」「どう思う?」「例えば?」とファシリテーションをして対話を深めてあげるとよいでしょう。

深い対話ができるようにサポートしてあげてください。

道徳の授業での例

この時の道徳では、4人班での交流をしました。

自分の意見の番号と理由を順に発表しながら、生徒同士で「なんでそう思ったの?」などの質問を行いながら対話が深まっていくような形になりました。

話がすぐに終わってしまう班が2つほどあったのでその班のサポートに入りながら7分程度の話し合いとなりました。

5.本質的な深い学びを深める為に必要な意見を意図的に交流する

それぞれの班で対話を行った後は、自分の意見や班で話した内容を全体へと広げていきます。

ポイントは、学びが深まるように発表を促すことです。

だからこそ、発表の前にできるだけ多くの生徒の意見を機関巡視をしておきましょう。

そして、深く考えている生徒の発表を促していきます。

また、同じような意見だけでは自分の考えは広がりません。

だからこそ、「そう思う」という意見も、「そう思はない」という意見も、「その他」の意見もバランスよく引き出していき、同じ問いに対してもさまざまな答えがあることを認識させてください。

また、同じ意見でもそう考える理由がことなるケースもあります。

こういった、自分との違いを感じることで新たな視点で物事を見ることができるようになります。

道徳の授業での例

実際にはこのような意見が出ていました。

Aさんの意見 【④仕事を変えることは悪いことではない】

「仕事を変えずにしているとその仕事に必要な力をすごく磨けるからいいと思うけど、人それぞれに色々な個性などがあると思うのでそれに合わないのであれば別に仕事を変えてもいいと思う。」

Bさんの意見 【③仕事を変えることはどちらかといえば悪いことではない】

「自分に合わない仕事なら続けても辛いだけなので、変えるのは全然悪いことではないと思う。」

というように、仕事を変えることは悪いことではないという意見がクラスの中では多くありました。

その中で、このような意見も出てきました。

Cさんの意見 【②仕事を変えることはどちらかといえば悪いと思う】

「人に迷惑をかけるから」

Cさんは、やめる立場での意見ではなく、辞められて残された立場の人の気持ちを大切にしていました。

Dさんの意見 【⑤その他】

「⑤自分に合わないところは無理して続けなくていいと思うけど、変えすぎると次の会社で雇われづらくなるから。」

Dさんは、やめること自体は仕方ないとは思うけども、何度も仕事をやめることは、信用を失うのではないかと考えました。

6.意見の違いを明確にし、追加の「問い」を出すことで、さらに自分の考えを持たせてから行う交流を繰り返す

クラス全体の意見を聞いたら、他の人の意見をきいてどう思ったかをもう一度考えて交流します。

他の生徒の意見がそのまま新たな「問い」になることも多くあります。

自分の意見と違う意見があるからこそ、新たな視点で物事を見ることができ、新たな価値観に気がつくことができます。

だからこそ、「自分との違い」を大切にさせてください。

また、生徒からの意見を踏まえた上で、教師が新たな「問い」を設定することも可能です。

道徳の授業での例

今回は、生徒の意見を踏まえて私が新たな「問い」を出すことにしました。

この時のクラスは「仕事を変えることは悪いことではない」という意見が大半で、「悪いことだ」と考える生徒は少人数でした。

そこで、次の問いを行いました。

「クラブ活動に入部して、本格的な練習が始まる前の基礎練習の段階で面白くないといって1週間でやめていく後輩がいたら、先輩としてはどう思う?」

この追加の質問で、

  • 「ちゃんと練習をせずに辞めるなんて許せない」
  • 「1週間では成長がすくないから楽しさはまだわからなくて当然」
  • 「続けているからこそ、楽しさがわかるようになってくる」

といった続けることが大切だという意見が出てきました。

そこでさらに、

「いろんな意見がでて、面白いですね。ではもう一度聞きますが、あなたは仕事をすぐに変えることをどう思いますか?」

という発問をして、もう一度考えてみてもらいました。

7.授業を通しての考え方の変化や気づきを振り返らせる

クラスの中で、「問い」に対する対話が深まってきたら、振り返りを行います。

振り返りは、自分の気づきを促すための型を使って行います。

気づきを促す振り返りの型
  1. 学んだこと
  2. 始めの意見
  3. 対話を通して気がついたこと。(意見が変わったこと。変わらなかったこと。など)

 

「今日は、〇〇について学んだ。初めは、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇と思っていた。しかし、対話をしている中で〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇だということに気がついた。」

この型を使って振り返りを行った後に、最後に振り返りの中から良い振り返りを全体にシェアしてから50分の授業を終了としまいした。

道徳の授業での例

実際の授業の振り返りがこちらです。

生徒はそれぞれの自分なりの意見を書いています。答えを書こうとするのではなく、自分はこう思うという意見を書いていることが素晴らしかったです。

今は自分に合う仕事が1番!!やと思っていたけど、仕事になると、たくさんの人が絡んでその職場だけでなく、たくさんの人を巻き込んでいるから迷惑になるし、辞めるならやめるずっと前に相談して決めるべきだなーと思いました。けど、自分に合った仕事をするのが1番人生輝きそうでいいなとも思いました。

今日は仕事を変えることについて考えました。
初めは、いろんなことに没頭することが必要があると思うから悪いことだと思っていたけど、交流して、自分に合う仕事を探すことは大事だしストレスとかが溜まることは良くないと思うから悪いことでもないんじゃないかなと思いました。辞める時はちゃんと考えたほうがいいと思った。

学んだことは初めはやりがいが感じられなくても続けてけていくうちに自分でやりがいを見つけられるんだなと思いました。やりがいは自分で見つけるんだなと気づきました。

今日は転職の良し悪しについて考えました。
初めはどちらとも言えなくてどっちもよくて悪いと思ってたけど、他の人の話を聞いて、転職を次々にするのは悪いことだと思った。なぜなら入社するときにどんな会社かは調べてるはずだし知らなかったなら自分のリサーチ不足だから。どうしても合わなくても半年は勤めたらいいと思った。

仕事を変えることは悪いことかについて、初めは仕事を楽しむのがいいと思うから自分が納得するのに変えてもいいと思ったけど、①とかの意見も聞いてその仕事をしんどくても続けることによって得られるものもしんどいのを頑張った分だけ大きいと思った。

どの生徒も対話から深い学びを得ることができていました。

まとめ

心先生

今回は、主体的で対話的な深い学びを実現するために必要なポイントを道徳の授業を例に解説してきました。

私自身、「対話」には大きな学びを生み力があると思っています。

また、教えてもらったことよりも、自分で気づき得たものの方が記憶に残ります。

そして、何より自分で考えて新たな気づきを得るということ自体が大切なことであり、この自分で考えて気づきを得る力こそが今後の日常生活でも活用できる大切な力になると感じています。

私自身まだまだ、勉強中の身ですがみなさんと一緒に今後も学ばせていただきたいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

ABOUT ME
心先生
「心を育て、心を繋ぐ」がモットーの中学校教師、心先生といいます。 30代前半の体育教師です。専門種目はバスケットボールです。私自身、バスケットボールを通して、心が育った経験から、生徒たちの心を育てたいと考えるようになりました。 生徒を育てるために、日々奮闘している先生の何か役にお役にたてればと思い発信しています。