こんにちは。
「心を育て、心をつなぐ」がモットーの体育教師。
心先生です。よろしくお願いします。
こんにちは。
質問です。学級目標を設定したいのですが、どのように設定したらいいのかがわかりません。学級目標の作り方にコツはありますか?
学級目標は学級経営をする上でとても重要なもの1つです。
これをなんとなくで決めてしまっては、もったいないです。
そして、目標とセットで理解して欲しいものは、目的と手段です。
この、「目的・目標・手段」の違いを理解したうえで学級目標を設定していきましょう。
今回はどのようなステップで決めたらいいかのか。
よくある失敗例は何か。を具体的に解説していきます。
学級目標の意味
目標のない集団は「チーム」ではなく「グループ」である
4月にクラス替えをしたばかりのクラスは、ただ偶然で集まっただけの集団です。
これは、ただの「グループ」です。
このただの「グループ」から「チーム」へと成長する為に必要なものがあります。
それが「目標」です。
目標があるからこそ、チームのメンバーが進もうとする方向が決まります。
同じ目標に向かって進むことで、チームとしての力を発揮できるのです。
もし、バラバラの方向を向いたメンバーたちが「よーいどん」でとびだしてみてください。
- 「クラス全員がいい思いをして欲しいと思っている人」
- 「自分だけがいい思いをすればいいと思っている人」
- 「何も頑張ろうと思っていない人」
バラバラの思いを持った状態でスタートすると、右に、左に、前に、後ろに・・・
それぞれの思う方向へ向かってしまいます。
だから、私たちがチームとして動くためには、目標となる道しるべが必要なのです。
メンバーの「どこに向かう」という意識が統一されることで、初めてチームとして機能するようになるのです。
目的・目標・手段の違い
目的・目標・手段のそれぞれの意味
「成し遂げようと目指す事柄」
つまり、最終的に目指すべき到達点であり、これにより進むべき方向性が決まります。
別の言い方をすると【意義目標】とも言えます。
目的【意義目標】は抽象的な目標になりやすいです。
目的を達成するために設けためあて
目的を達成する道の中に作った途中地点のことです。
別の言い方をすると【成果目標】とも言えます。
目標【成果目標】は具体的に設定することが必要です。
目的を達するためにその途上で使う方法
目標を達成するために行うことを指します。
別の言い方をすると【行動目標】とも言えます。
手段【行動目標】も具体的に設定することが必要です。
つまり、
目的【意義目標】が最終的なゴールで、
そこに目指すまでの道のりに、目標【成果目標】があり、
その目標【成果目標】を達成させるために、手段【行動目標】があります。
目的【意義目標】・目標【成果目標】・手段【行動目標】の例
ワールドカップで日本代表の監督に就任した岡田監督が設定したと言われている目標がこちらです。
「日本のサッカーで史上成し遂げたことのない成績を残す」
ワールドカップベスト4入り
6つの指針
- 楽しんでやる
- 自分でやる
- 勝つためのベストをつくせ
- 今目の前のことに集中せよ
- 常にチャレンジせよ
- まずは挨拶せよ
学級目標の場合
例 「クラスの全員にとって居心地の良いクラスにしたい」
といったように、意義目標は方法性を示すものなので抽象的でかまいません。
「クラスの全員にとって居心地の良いクラスにしたい」という目的【意義目標】を達成するためには、今のこの時期に何が出来るようになればよいかを考えていきます。
例
新しいクラスになったばかりの目標
→「1週間以内にクラス全員の名前を覚える」
体育祭での目標
→「クラス全員で協力して、全員リレーで優勝を目指す」
といった形になります。
注意点としては、具体的に目標を設定することです。
「頑張る!」といった、達成したか達成していないかわからないような抽象的な目標は避けてください。
目標を達成するための手段を考えていきます。
目標【成果目標】が「1週間以内にクラス全員の名前を覚える」の場合
手段【行動目標】は・・・
1クラスが40人として、1週間で覚えるためには、1日8人覚える必要がある。
そこで、朝登校したら1日8人の生徒に、名前を呼んでからあいさつを行う。
例 「〇〇君、おはよう!」
目標【成果目標】が「クラス全員で協力して、全員リレーで優勝を目指す」の場合
→手段【行動目標】
- リーダーを中心に〇月〇日までに、全員リレーの必勝方法を調べる。
- 昼休みにクラスでバトンパスの練習をする。
- 昼休みに、一緒に練習しない生徒に対しては、仲のいい生徒が一緒に練習しようと声をかける。
このように、目標【成果目標】を達成するためには、どのような行動をしていけばいいかを設定していきます。
学級目標には、目的【意義目標】がオススメ
では、学級目標を設定する時にオススメなのは、目的【意義目標】です。
理由は、目的【意義目標】は具体的にどのような行動をすればいいかはわかりにくいものの、最もブレイクスルーが起きやすいからです。
英語の「breakthrough:突破、打開、大きな進歩」からきている言葉。
「break:壊す」と「through:通り抜けて」がくっついてできた言葉がブレイクスルー(breakthrough)です。
つまり、今までの状態から少し成長した程度ではなく、まるでステージが1つ上がったような大きな進歩のことを言います。
そして、具体的な目標【成果目標】や手段【行動目標】を学校行事などに合わせて、設定していき、具体的な行動に落とし込んでいく事が効果的です。
失敗しない学級目標のつくり方
失敗しない学級目標決定に向けての流れ
クラス目標はクラスが解散する時までに目指す最終地点です。
だからこそ、真剣に、魂をこめて作って欲しいと訴えかけます。
大切なことだからこそ、私は、学級目標を決める時に次の2段階できめるようにしています。
- 大切にしたい価値観を決める
- クラスで決めた価値観を含んだ目標をかっこいいものにする
なぜ、この2つのステップかというと、目標設定でよくある失敗を避ける為です。
いきなりクラス目標の決定を目指して考え出した時に良く起こるのが、
Never give up
One for all, All for one
といった「カッコいいものはないか」という基準で考えてしまうことがあります。
何が問題かというと、形や見た目にこだわっているだけで本質が伴っていないところです。
こういう状態で多数決を行うと、「どっちがかっこいいか」という基準で決定されます。
大切なことは、見た目のカッコよさではなく、どんなことを大切にしたいかという本質的な部分です。
「卒業する時にどんなクラスになっていたいのか・・・」という本質的な部分を先に決めていきましょう。
みんなで、「こんなクラスにしたい」「こんな力をつけたい」「こんな思いをしたい」という思いを共有し、その思いが定まったら、あとはとびっきりかっこよくしましょう。
例1
本質 「全員が団結できるようなクラスにしたい」
最終的なクラス目標 「ONETEAM」
例2
本質 「一人ひとりが自立できるクラスにしたい」
最終的なクラス目標 「自立への道」
このように2段階で考えることで、議論の本質がブレずに進めることができます。
では、ここからは実際に目標を設定しようと思った時に、失敗しやすい例を紹介します。
失敗例1 目標設定が低すぎる
目標とはあくまで、自分を成長させるものです。
今すでにできていることを目標に設定しても成長することはありません。
だからこそ、低すぎる目標設定に意味はありません。
失敗を回避するために
目標は、今の自分よりも成長しなければならない目標にすること
「目標は成長するために設定するもの」と肝に銘じましょう!
失敗例2 目標設定が高すぎる
目標が高すぎてもモチベーションが上がりません。
例えば、バスケットボールを始めたばかりの子どもが、「1年後に、オリンピックで金メダルをとる」という目標を設定したとします。
その日は、モチベーションが高いかもしれませんが、しばらくすると、自分の立てた目標が高すぎることに気がつき、「達成できるわけがない」と挫折してしまうのです。
高すぎる目標は挫折だけをうみ成果が上がりません。
失敗を回避するために
その目標の達成する可能性 × 達成感= やる気の度合い
- その目標の達成する可能性 10% × 達成感 90% = やる気の度合い 900
- その目標の達成する可能性 90% × 達成感 10% = やる気の度合い 900
- その目標の達成する可能性 50% × 達成感 50% = やる気の度合い 2500
この数字を見たらわかるように、目標は低すぎても、高すぎてもやる気があがりません。
達成できるか、できないかの確率が50%程度が最もやる気が高まります。
努力すればギリギリ達成できる目標に設定することが、最もいい難易度の目標なのです。
失敗例3 目標が何か忘れてしまう
中学生が学級目標を立てる中でよくあるケースは、「あいうえお作文」にするケースです。この「あいうえお作文」はどうしても、文章が長くなりがちです。
例えば、「あいうえお」で作文を作ってみます。
- あ 明るく元気で
- い 一緒に過ごし、
- う ウキウキ、ワクワクしながら
- え 笑顔が絶えない
- お 大人なクラス
といった目標ができたとします。
決めたばかりの時は覚えているかもしれませんが、夏休みが明けたあたりでもう一度聞いてみてください。
ほとんどの生徒は、忘れています。これでは、目標を設定した意味がありません。
失敗を回避するために
目標は短く、わかりやすいものにすること
目標で最優先することは、語呂の良さではありません。
クラス全員が覚えていない目標を設定しても、ただのお飾り目標になってしまいます。
全員が覚えることができる、短くてすっきりしたものをオススメします。
失敗例4 目標が抽象的すぎて、人によって認識が違う
目的【意義目標】に関しては抽象的になりやすいものです。
しかし、抽象的すぎては生徒一人ひとりの認識に違いが生まれてしまいます。
例えば、
「良いクラス」
この「良い」というのは人によって違います。
子どもたちの中には、賑やかなほうが好きな生徒もいれば、静かなほうが好きな生徒もいます。賑やかが好きな生徒が一生懸命良いクラスにしようと思って、大きな声で盛り上げたとします。
すると、静かな環境が好きな生徒からしたら、どんどん居心地の悪いクラスになっていってしまいます。
このような曖昧過ぎる目標ではいけません。
失敗を回避するために
目標は全員が同じ認識ができるようにすること
例えば、目標を
「全員にとって居心地の良いクラス」にするだけで変わります。
全員の居心地がいいクラスを作るためには、自分だけのことを考えるのではなく、クラスメイトの居心地の良さも考えることになります。
すると、「自分は騒いで遊びたいけど、教室で静かに本を読んで過ごしたい人もいる。だから、外に出て遊ぶようにしよう。」
と、クラス全体のことを考えることができるようになるのです。
失敗例5 担任が自分の意見を押し付ける
担任が所信表明をすることは大切なことです。
「こんなクラスにしたい・・・」この想いは大切にするべきです。
しかし、子どもたちに押し付けるものではありません。
押し付けたのもは、目標とは言いません。
失敗を回避するために
目標は生徒に考えさせて自分達で決定させること
目標は自分で考えるものです。
他人が考えて与えた目標は、目標ではなく「命令」です。
自治的なクラスを作るために、まずは自分たちで目標を決めることが重要です。
また、自分で決定したという感覚がモチベーションを高めることにもつながります。
決めるのはあくまで生徒たち。
教師はサポートというスタンスを忘れないでください。
まとめ
今日は、失敗しない学級目標のコツを説明しました。
学級目標は年度が変わり、新しいクラスになったばかりの時期に行う活動です。
この目標を作る過程で、クラスの生徒の意識を同じ方向へとそろえていく必要があります。
目的【意義目標】と目標【成果目標】と手段【行動目標】の違いを理解して、子どもたちに考えさせてあげてください。もし、子どもたちだけでうまくいかない時は、そっとサポートしてあげてください。
あなたの担任するクラスが、いいスタートを切れることを願っています。